2023年1月、くるん京都ははじめての主催セミナー、「はじめよう、ごみを生まない『小売』」を開催しました。量り売りスーパーマーケットの開業で注目を集めている、株式会社斗々屋(ととや)の梅田代表をメインゲストにお迎えしたこともあり、イベントは大盛況。
この時の様子や、斗々屋についての詳しい情報は、ぜひこちらのレポートでご覧ください。
ごみを生まない小売や生活スタイルに転換していくために、多くの人がヒントとやる気を得る機会となったこのセミナーですが、どんな変化も日常に取り入れていくには時間がかかるもの。特に、それが現在の世間一般の在り方と異なる場合はなおさらです。だからこそ、イベントそのものも一度きりで終わりにせず、継続的に行なっていくことが必要だと考えました。
そんなわけで開催した第2弾。多くの人に、持続的な活動につなげていくヒントを得てほしいとの想いから掲げたコンセプトは「みんなでつくる、ごみを生まない小売」。一見むずかしく思える「ごみを生まない小売」も、小売業者だけでなく、生産者や消費者、行政といった、みんなの想いや行動があれば、きっと実現に近づけるはず。そう考えて、セミナーではなく、参加者同士の対話に重きを置いたオープンミーティングにすることを目指しました。
今回のブログでは、そんなイベントの様子を、全7回に分けてお送りいたします。
目指すは「地球一個分の暮らし」
こちらの写真は、ガラス容器に入った商品がずらりと並ぶ、斗々屋京都本店の店内の様子です。斗々屋京都本店のコンセプトは、「ゼロウェイストスーパーマーケット」。
ゼロウェイスト(zero waste)とは、「ごみゼロ」のことで、リサイクルなどを頑張るだけでなく、そもそも、できるだけごみの出ない暮らしを目指そう! という世界的なムーブメントです。
では、どうしたらゼロウェイストを実現できるのか?
一番の近道は、「一度使ったら捨てる」という、使い捨ての習慣を手放すこと。そして、マイ容器やデポジット容器(有料の貸し出し容器)を使っての量り売りは、使い捨てではなくリユース(再利用)を当たり前にしていく上で、とても役に立つシステムです。しかも、好きなものを好きな分だけ買えるので、家庭でのフードロス削減にもつながる。
そんな量り売りのお買い物スタイルを通して、斗々屋が目指しているのは、「地球一個分の暮らし」が可能になるライフスタイル。限りある地球の環境資源を守ることと、経済発展が両立する、自然・人・経済のバランスが取れた心豊かな暮らしです。
ゼロウェイストに店舗運営するために、量り売りを事業として成り立たせるために、斗々屋にはさまざまな工夫が取り入れられています。
たとえば、さまざまな最新テクノロジー。センサーと連動して購入した商品を自動的に表示してくれるはかり(写真左)、どの野菜や果物を載せたかAIが自動判定してくれる青果用はかり(写真中央)、減量式の液体専用はかり(写真右)、などなど。量り売りという昔ながらのスタイルを、便利で時短な今時のお買い物に取り入れるためのツールが、数多く導入されています。
そして、はじめて来た人からも常連さんからも重宝されているのが、デポジット容器システム。有料の貸し出し容器は、使い終わった後で返却すれば全額返金されるため、実質無料で利用することができます。このシステムのおかげで、ふらっと来店した人も、仕事帰りに手ぶらで来店した人も、気軽に量り売りを利用できるようになっています。

また、斗々屋では、「食品ロスを生みさない三毛作」を運営に取り入れています。具体的には、
くたびれてきた野菜やその他の食品は、お惣菜に加工する
ランチとして提供する
長期保存できるように発酵食品やレトルトとして瓶詰めする
という3つの方法で、普通であればロスになりかねない食品も余さず有効活用しています。
さらには、販売以前に発生するごみも意識して、規格外野菜を優先的に仕入れたり、通い袋・通い箱での仕入れによってなるべくごみを出さない運営を意識したり、生ごみはすべて堆肥化したりという徹底ぶり。また、お客さんに対しても、コーヒーかす、テトラパック、ステンレスボトルなど、さまざまな資源の回収も行っています。
こうした努力の甲斐あって、斗々屋を運営するにあたって出ているごみの量は、圧倒的に少なく抑えられています。
こちらのグラフと表は、斗々屋の小売部門とキッチンからそれぞれに出ているごみの量を表したもの。4月に小売部門から出たごみは19kg(ごみ箱1杯分)で、これは燃えるごみとプラスチックごみを合わせたものです。ちなみに、この中でもプラスチックはほとんど出ておらず、回収は2ヶ月に1回で済んでいます。
斗々屋が企画するすべての事業に共通する軸は、循環経済(サーキュラー・エコノミー)への転換につながる経済活動を行っていくこと。ゼロウェイストなビジネスモデルを日本全国に広げていくために、実店舗の運営から得たノウハウは、さまざまなかたちで共有しています。
たとえば個人事業主へは、オンライン講座、現場研修などでのノウハウ共有を行っています。斗々屋は、量り売りの商品卸サポートも行っており、このサポートを受けている「ととふれ」さんとの契約は、現在114件に上るのだとか。
また、企業に対しては、法制度や規制も含めたこれからの社会的な変化に対応していくためにも、循環経済に切り替えていくためのビジネス展開を考えるコンサルティング、社内ワークショップの提案を行なっています。その中では、京都本店(約50坪、コンビニエンスストアと同規模)のようなセロウェイスト・スーパーマーケットの立ち上げサポートやコンサルティングだけでなく、新たな商品開発、サステナブルなビジネスモデル作りにつながるワークショップを斗々屋と一緒に行う活動もしているのだそう。
地球一個分の暮らしを叶える、持続可能なスパイラル。その一部になれる社会を、斗々屋はあの手この手で作り出そうとしているのです。
※ 画像はTotoya.inc ご提供。無断転載はご遠慮ください。
筆者:むるま
Comments