講演の後は、会場からのご質問、事前に寄せられた疑問やご意見について、梅田さんに答えていただきました。
まずご紹介したのは、「斗々屋さんの商品が高くて手が出ません! せっかくいいものを置いているのに、もっと安くできませんか?」というご意見。
これには梅田さんも「自分でも高いなぁ、と思う商品はあるんです」と、チョコレートを例にあげられました。「理由はいろいろあるんですけど……」とおっしゃった通り、チョコレートはフェアトレードやオーガニックにこだわると、どうしても価格が高くなってしまう商品。もっとも本来はそれが適正な価格であり、安価なチョコレートが流通する背景には、児童労働、低賃金、環境破壊といったさまざまな問題があります。
一方で、元々が適正価格で流通している商品は、小分けパッケージや人手が削減できている分、安く提供されているものもあります。たとえば、100g単位ではお高く見える和田萬さんの有機ごまも、一般的なパッケージ量である20〜30gにしてみると、実は中々に良心的なお値段です。
また、野菜については、オーガニックのものをなるべく日常に取り入れてもらいたいという思いがあり、通常よりも粗利を下げて販売しているのだとか。美味しくて新鮮で、その上安いとなれば、これほどうれしいことはありませんね。
コミュニケーションから始まるもの
続いて手を挙げてくださったのは、福井県量り売り店を営むはかり売りgrammeさん。フードロスを出さない大切さは消費者に浸透していても、パッケージごみの問題はまだまだ伝えきれていないことに、日々葛藤を感じているとのことでした。
「使い捨て用ジッパー袋を持参される方も多いのですが、お客様に『使い捨てない』大切さをスムーズにお伝えする術はありますか?」
多くの量り売り店さんが共感しそうなこのお悩み。実は、斗々屋にも共通するものなのだとか。それでは、斗々屋ではどうしているのか。基本的には、何回も使う前提であればOK、と考えているそうです。
たとえば乾物なら、同じ袋を繰り返し使うことをお勧めする。ただしお惣菜など、繰り返しの使用が衛生的に問題になりそうなものの場合は、お断りしているとのこと。
「まず一歩体験してもらうことが大切だと思っているので、基本的にノーとは言わないようにしています」
お客さんの中には、「デポジット容器の方が、蓋を開けてレンジでチンしたらそのまま食べられて便利ですよ?」とお勧めすると、納得する人も多いと、梅田さんは話します。
「みんな、プラの方が便利だと思い込んでいる部分があるんだと思います。だからこそ、前向きなおすすめの仕方をするように工夫しています」
この梅田さんのお話を受けて、質問者さんも「コミュニケーションが大切ですね」と頷かれていました。
また、運営に関わる質問も色々と出ました。
Q:生ごみを農家さんへ渡すときは、どのようにされてますか?
A:直輸入のはちみつが入っていたバケツに入れて渡しています。最近は、亀岡で畑をやっているスタッフが、土づくりのために週一で持ち帰ってくれています。匂いなども特に問題になりませんよ。
Q:食品を扱う上で一番気がかりなのは衛生管理。デポジット容器の殺菌・消毒の手間、破損のコスト、手間にかかる人件費など、事業者側の課題をどうクリアしていますか?
A:デポジットびんの洗浄は、洗びん屋さんにお願いしています。デポジットクリア容器(プラスチック製)などは、お店にある業務用食洗機で70度くらいで熱湯洗浄し、その後、コンベンションオーブンで70〜80℃で熱殺菌、最後に強アルカリを用いてサラシで拭き上げています。事業規模にもよるでしょうが、長い目で見るとコスト面では、使い捨て容器を買い続けるよりも経済的だと思います。
Q:デポジット容器の返却率は?
A:去年時点での返却率は40%程度でしたが、徐々に上がってきて、現在は50%ほどです。毎日利用するスーパーマーケットのデポジット容器は、段々と溜まってきますし、タダではないので、時間がかかっても最終的には返してくれる人が多いと思います。
Q:マイ容器持参率と、デポジット容器での購入率、それぞれの推移は?
A:きちんとデータをとっているわけではないので正確な数値は分かりませんが、持参率は人による印象です。常連さんでも、デポジット容器ばかり使う人も多いし、全部容器を持ってきてくれる人もいますね。また、ふらっと来店した人の場合は、デポジット容器を実質無料で使えることをご説明すると、7、8割の方がデポジット容器で購入してくれます。
Q:生産者さんに、パッケージフリーな仕入れに協力してもらうのは大変でしたか?
A:農家さんは割と簡単でした。収穫したらそのままケースに入れてもらって、「新聞に包んでテープで止めるのもしないで! はがすのが手間になるから!」とお願いしました。農家さんサイドとしては、収穫したものを箱に入れるだけで済んでいるので、そんなに交渉も要りませんでした。
難しかったのはきのこです。えのき、エリンギ、マッシュルームの農家さんは、プラのトレーに入れてラップをしないと、商品がダメになりそうで怖いと感じておられて。そこを、「傷む前にすぐに調理するし、乾いてきたら乾燥きのことして売るから!」と積極的に口説き落として、チャレンジしてもらいました。
ごまなどは、小さいパッケージに詰めるオペレーションが元々工場でできあがっていたので、どうするか悩みましたが、社長さんが、「自分たちもごみを減らす取り組みをしたいから」と言って、前向きに頑張ってくれました。今は、ふりかけ専用のスタッシャーなどを作って、それを通い袋として使用しています。
中には、取引を断られた業者さんもいます。でも、実はごみのことを薄々気にしていたという業者さんもいて、そういう「自分たちもごみを減らしたいんだ」という想いを持っている業者さんが協力してくれているイメージですね。
※ 画像は量り売りgramme、Totoya.incご提供。無断転載はご遠慮ください。
筆者:むるま
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